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「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律」なるものがあります。法務局が主体となって施工されている法律です。
該当地のお年寄りなどに、古い明治の土地状況や人間関係を教えて頂きますが、面白く興味をひく話が多々ございます。
今回は、土地の名称(大字小字)についてのお話です。

家康お膝元であり、駿府96か町を抱える静岡市の地名に興味がある方もいるかと思います。そんな中、忘れ去られるのみの運命の、興味深い地名や小字をピックアップしてみました。

大字は台帳分が168あり、地籍図のみに存する物が19あり、計187です。小字は台帳と地図双方にあるものが約5000。台帳にあるが地図に無い、地図にはあるが台帳には無い、または地域の長や古老からの伝聞が、約3000です。静岡市というのは小字が多いのだそうです。土地家屋調査士であれば小字を追跡することができます。静岡市の扱いにくい小字、またはその場所の現在を紹介いたします。



「牛蒡ヶ谷」「ウバヤキバ」 最早誰も見向きもしない元「姥捨て山」です。

追跡調査にて、地主さんと一緒に山に分け入りました。イノシシの掘った穴を避けつつ、竹の間に結んだロープをたよりに、なんとか現地にたどりつくことができました。寂しいお墓がぽつんとありました。今川と一緒に来たという公家さんの子孫が管理しておりました。口減らしのために覚悟を決めたご老体は、見晴らしの良い高台で村を眺めてから、件の小字の姥捨て山に向かったとのことです。

「古傾城(コケイセイ)」  ※傾城美人の意,および遊女の意。

漢書に美人を「一顧傾人城,再顧傾人国」と表現したのに基づき,古来君主の寵愛を受けて国 () を滅ぼす (傾ける) ほどの美女をさし,のちに遊女の同義語となった。
ケイセイ遺跡という名称の静岡市駿河区に存する遺跡群があります。文化財課になぜケイセイ遺跡という名前をとったのか問い合わせたところ、詳細は不明とのことでした。文献による追跡調査によると小字が古傾城の近くに最初に発見されたのでケイセイとなったそうです。駿河区の伊河麻神社さんの南側で発見されたらしく、近くには小字に神道(シンドウ)がありまして、古傾城と神道が比較的近くにあるのも面白いですね。神社さんの近くにいろいろな文化が集まるのはよくある話です。仮に傾城遺跡と命名されたらいかがわしい遺跡と勘違いされてしまうとの懸念から、カタカナにしたのではと勘ぐってしまいました。

「疫病平」
現在地を調査中です。昔に病気に関する良くないことが起こったことが想像できます。
「サイノカワラ」

昔に子供に関する良くないことが起こったことが想像できます。

「四脚門前町」

現在の中町近辺になります。縁起が悪いからといって地名や町名を改変するのは仕方ないと思いつつ、文化的側面が消え去るのは寂しいと感じました。

「シビトノサワ」

百戦錬磨の伝説の法務局乙号職員さんと一緒に捜索しましたが、台帳にはあるのに地図では確認できませんでした。あるはずなのに無い、不思議だとの見解でした。現在地は特定できませんでした。

興味深い地名や字はまだまだあるのですが、一般人でも興味をそそる地名をピックアップしてみました。経験則ですが、一見扱いにくい地名を説明できるというのは、土地家屋調査士が専門家である所以であると、老若男女誰であっても、相当強烈なインパクトを残すことが出来ます。この手の地名は一般人であっても、年齢層を問わず興味を引くようです。

法務局は所有者等探索委員の協力を土地家屋調査士に求めています。こういった地名を知り得るいい機会になる可能性がありますね。合法的に立ち入りにくい話を聞くことが出来ます。興味があるようでしたら、名乗りを上げていただくのも実益も兼ねて面白いかと思います。

今回は扱いにくい地名を紹介させていただきましたが、土地家屋調査士であれば高確率で現地にたどり着けますので、皆様におかれましては地元の字や地名を調べてみるのも一興かと思います。